私は「顎関節症」です。
小さい頃から顎には違和感を持っていました。
見た目は普通ですが、左の顎だけ開閉時にカクカク音がします。
しかし全く痛みがなかったので特に治療もせず、そして長い歳月が流れました。
ところがある日、鳴りを潜めていたその顎が突然謀反を起こしたのです。
突然起こった顎ロック
それは数年前のある日のこと。朝起きて寝ぼけたまま洗面台へ。
歯を磨こうと歯ブラシを手に取り、口を開けます。
！？
突如感じる違和感。
可動域の限界というか、意図するところまで口が開かず、縦にした指２本分も開いていません。
しかし顎に痛みは無く、顎が外れているという感じでもありません。
説明が難しいのですが、「あれ？口ってこれしか開かないんだっけ？」と思ってしまうほど
その限界の位置から更に口を開けようとした時、左顎の付け根に激痛が走りました。
可動域内で口を開閉する分には平気なのに、それ以上開こうとするとすごく痛みます。
まるで蝶番の開ききった扉をさらに広げるような、ミシミシという感じがします。
右顎はまだ開きそうなのですが、左顎が何かに引っかかっているようで、それ以上開きません。
だだ、これだけは分かります。
これ以上開いたら確実にアゴはぶっ壊れるでしょう。
用意されていた朝食も口が開かないので満足に食べられません。
口さえ大きく開けなければ痛くはないので、とりあえず会社に出勤します。
そして出勤中の電車内で、ある
あくびです。
普段何気なくしているあくびが、無意識に口を大きく開こうとするため、左顎に激痛をもたらします。
いつもなら気の抜けた癒しの行為である「あくび」が、私には拷問となりました。
あくびで勝手に開こうとする口を、別のチカラで必死にねじ伏せます。
周りには、憤怒の感情を必死に抑えるヤバい人に見えてるのではないでしょうか？
その度に結構な痛みを感じるのは、きっとねじ伏せる時に左顎に負担がかかっているからでしょう。
あくびに気を許せば顎がぶっ壊されるだろうし、抵抗すればそれなりの痛みを伴う。
口が大きく開くという当たり前のことが、なんて幸せなんだろうと、顎の激痛と共に痛感したのでした。
顎関節症とカラダの歪み
突然口が開かなくなったことにビックリしたものの、私の場合は常に開かないというわけでなく、日や時間によって開いたり開かなかったり。
どうやら寝ている時の何かが関係しているようで、朝から調子よく開くこともあれば夕方まで開かないこともあります。
顎関節症を調べると、真っ先に出てくる原因がこれです。
- 歯並び
- 歯ぎしり
- 噛み合わせ
- 食いしばり
- 顎関節や顎の筋肉のこわばり・緊張
- 左右片側の歯だけでモノを食べる
そして顎関節症の治療のほとんどは、「顎・口・噛み合わせ」などを中心に行われます。
症状が出ている部位からして当然でしょうね。
でも後に私を救ってくれたお医者様はこう言教えてくれました。
そして顎関節症も体の歪みのひとつと言えます。
体の不調は、肉体面・精神面・生活習慣など、たくさんの要素が複雑に絡み合っていて、顎が歪んだからといって顎だけに原因があるわけではありません。顎だけを無理やり矯正すれば、必ずどこか別の部分がバランスを崩します。
どこか１箇所の歪みを正すより、カラダ全体を見て整える。そうやって歪みと上手に付き合うことが重要なのです。
もちろん物理的にズレてしまった関節円盤や顎の痛みをとるための治療は大事です。
でもそれだけでなく、日頃から整体などで体全体の歪みやバランスを診てもらうのも顎関節症の大事な治療の一つだと分かりました。
・・・というのは後から知ったことで、これをもっと早く知っていれば、私の顎関節症は更に
顎関節症と病院
大きな大学病院には顎関節症を専門にした診療科があります。
かくいう私も、家からは遠いですが都内にある某○○医科歯科大学の顎関節治療部で診てもらいました。
レントゲンを撮った結果、口の開閉に重要な役割を果たす「関節円盤」が変形してしまったのが原因のようです。
しかも私の左顎の骨は生まれつき少し変わった形をしてるらしく、それが余計に引っかかりやすくしているとのこと。
幸い手術が必要なほどではなく、変形した関節円盤を本来あるべき位置に戻せばいいようです。
とりあえず簡単に治せそうで安心しました。
そう言って口の中に指を入れ、奥歯の付け根部分を下にゆっくりと押し始めました。
そんな顎の筋肉のマッサージを10セットくらいやったでしょうか。
そして手際よく私の歯型を取り、プラスチック製の透明のマウスピースを作成。
その手には、こんな感じの２つの木片を輪ゴムで縛っただけの洗濯バサミのようなものが。（こんな作りで、確か1000円以上したはず。）
まさか関節円盤を戻すだけでここまで大変だとは思いませんでした。
マウスピースをして寝てみましたが、口にはめただけで若干吐き気が･･･。
木製の洗濯バサミも、口にくわえただけで若干吐き気が･･･。
次回の予約も遠路はるばる通いましたが、その次も２週間後とか言われた時点で私の中で何かが崩壊。
素人ながらこの治療に不安を感じてしまった私は、なんとか別の治療法を模索し始めるのでした。
顎関節症と整体院
顎関節症の治療法を調べていると、頻繁に「整体院」という単語が出てきます。
前述のお医者様もおっしゃっていたように、顎関節症とカラダの歪みには大きな因果関係があるからです。（この時点ではまだ知らない）
整体院について詳しく調べてみると、確かに顎関節症の治療をうたっている整体院は多く、「顎関節症が改善した」というレビューが多いのも事実。
早速ネットで比較的家から近い場所で、顎関節症治療を前面に押し出している整体院を発見。
しかしこの整体院が私の顎関節症を致命的に悪化させることになるとは、この時の私は知る由もありませんでした。
その整体院はまるで廃墟のような雑居ビルの一室にありました。
受付を済ませて待合室で待つこと数分、処置室に呼ばれると、いきなり１本のビデオを見せられます。
腕を垂直に上げらない患者が、少しの処置で軽々と垂直にあがるようになる趣旨のプロモーションビデオでした。
それが終わると、満を持して店の奥から整体師が登場。
そう言うと私の腕を垂直に上げ、耳の後ろまで上がっていないことを確認。
私の体をいろいろいじくりまわし、再度腕を垂直に上げる。
確かに先程よりは上がった気がしますが、それって施術という名のストレッチみたいなことしたから体がほぐれただけじゃ・・・。
え？今の施術は何だったんですか？
顎の辺りをひとしきり見たり触ったりした後、なるほどね～的な空気感を出してこう切り出します。
そう言って部屋の奥からあるアイテムを持ってきた整体師。
なんとその手にはチャカ様を持っているではありませんか！
いや、よく見ると先端に何か装着されています。
どうやら引き金を引くと先端に装着された何かが飛び出して、戻せば繰り返し使えそうな仕組みになっています。
（※これはイメージです。）
ナルホド。そのチャカで患部を矯正していくわけですね。
しかしレントゲンも撮らずに、そんな荒々しい道具で関節円盤を上手く調整できるなんて、まさにプロの技、神業ってワケですね。
ボゴオォォォンッッ!!
な、なんという衝撃・・・。
場所が場所なだけに、てっきりソフトタッチだと思い込んでいたせいで、完全に不意打ちを喰らいました。
これは確実に顎がズレる！
ボゴオォォォンッッ!!
この繰り返しを何セットくらいやったでしょう。
結構な衝撃で記憶が飛んだようで、あまり覚えていませんが、２０回以上はやっていた気がします。
確かに、いつもなら少し左にズレながら開いていた口が、真っ直ぐに開いている気がします。
でも左顎の付け根がズキズキするんですが・・・。
そのシールとは、磁気がないピップエレキバンみたいなペラペラの丸いシールでした。
最後に２週間後にまた予約を入れ、初回料と施術料で約11000円をお支払い。
その帰り道で私は施術後のズキズキと共に、左顎にいつもとは違う明らかな違和感を感じていました。
顎関節症の治療はカラダ全体で歪みを整える
施術の翌日。朝起きるとやはり口は開きません。
まぁこれはいつものことで、いつもなら時間が経てば開くようになるはず・・・。
ところが、待てど暮らせど、まったく開く気配がありません。
それどころか、少し口を開くだけで左顎に痛みを感じます。
明らかに前日の整体院でなにかしらをやらかした予感がしますが、この期に及んであの整体院にすがる気にはなれません。
何より私の中の本能が、あの整体院はヤバいと訴えています。
知人ネットワークにすがってみたところ、なんと近所に顎関節症のマッサージ治療をしている歯医者があることを知り、藁をも掴む思いでその歯医者に行き、現状とこれまでの経緯を話しました。
すると先生は私の口の中をまじまじと見た後、こう話してくれました。
問題は一時的でも筋肉が萎縮して本来の動きができなくなることで、元々変形していた関節円盤を更に悪化させてしまう可能性があること。今回はそこへ追い打ちをかけるように整体院での矯正じみた強引な施術が致命傷となり、関節円盤に下顎が完全に引っ掛かるようになってしまった。
矯正というのは、子供ならまだしも、カラダの動かし方が体に染みついている大人にやると逆効果になることが多い。だから１箇所の歪みを正すより、カラダ全体をみて「整える」ことをした方が、案外あっさり治ってしまったりする。生きていれば人間の体は必ず歪むので、その歪みが一線を越えたとき、その人の
冒頭で話した私を救ってくれた方は、この歯医者の先生です。
私の体幹を診て、姿勢が悪く体が歪んでいることを指摘して下さり、それが顎関節症を悪化せしめた原因だと説明してくれました。
そして今後の治療として、まずは変形した関節円盤を元の位置に戻していくマッサージを行うとともに、体の歪みを整えるべく先生おすすめの整体院も紹介してくれました。
その結果、なんと週１回の歯医者と整体院の施術で、１か月もかからずに口が普通に開くようになったのです！
外科的治療は何もなく、１回の治療費は歯医者と整体合わせて3000円程度でした。
家からさほど遠くなく通うのも楽で、治療時間もそれぞれ30分ほどだったので全く辛くなかったです。
今までもあった口を開くときの顎のちょっとしたズレはあえて治さないことにしました。
これまでの人生で私の体に染みついた顎の動かし方、顎の筋肉の付き方、ここを無理に矯正してしまうと、必ず別の部分に歪みが出るとのこと。
悪い部分の歪みだけを正すのではなく、体全体の歪みと上手に付き合う。
こんな考え方もあるんですね。
さいごに
あれから口が開かなくなるということは一度も起きていません。
しかし私は普段から姿勢が悪いので、何もなくても３か月に１回は整体院で全身を診てもらうことにしました。
実はこの記事の体験は今から5年以上前のこと。
あれから顎関節症の治療法は進歩したのかと思って調べてみたら、相変わらず私が某○○医科歯科大学でやったような治療が主流なようです。
もちろんその治療で回復する人もいるのでしょうけど、私が体験した治療法ならもっと早く簡単に治るはずの人も多いのでは？
どこか１箇所の歪みを正すのではなく、カラダ全体を見て整える。
私と同じように今やっている顎関節症治療に疑問を抱いてる方がいたら、ぜひ「正す」のではなく「整える」という治療も考えてみて下さい。
カラダ全体のバランスを整えることで、自分の弱い部分にかかる緊張やストレスが緩和されて、結果として顎関節症が改善される場合もあると思います。
ただし整えるのはあくまでもカラダ全体。
整体でチャカ持ち出されたりしたら注意ですよ！